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サシバの生態

サシバ和名:サシバ
学名:Butastur indicus
英名:Grey-faced Buzzard

 

 

 

世界の分布・日本の分布

世界の分布

サシバは、アムール地方南部、ウスリー地方、中国北東部、朝鮮北部、日本などで繁殖し、冬期は南西諸島、インドシナ、マレー半島、フィリピンなどで越冬する。

 

 

 

 

 

 

日本の分布

日本では、東北地方から九州地方の低地の農村地帯から山地の森林で繁殖する。南西諸島の一部では越冬するものもいる。

 

 

 

 

 

生息状況

渡りの主要な中継地である沖縄県宮古島での宮古野鳥の会による秋の個体数カウントによると、最も多い年(1980年)で5万羽以上が確認されている。これ には、繁殖個体と幼鳥、繁殖に参加しない若鳥が含まれていると考えられる。観察個体数は、1985年以降は減少傾向にあり、2000年以降になると観察個 体数が1万~2万羽の年が多い。

このように、生息数が減少していることから、2006年には国のレッドリストでは「絶滅危惧2類」に指定された。

 

形態

成鳥

頭部から体上面、翼上面は赤味のある褐色で、顔は灰色、目は金色。喉に太い縦線が1本あり、胸は褐色で、腹には褐色の横斑がある。メスはオスに比べて、上面の赤味や顔の灰色味が薄く、白い眉斑が目立つ個体が多い。体長は、47~51cm、翌開長103~115cm、体重375~433gであり、メスがオスよりもやや大きい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幼鳥

成鳥よりも上面に赤味が少なく、首周りから腹にかけて黒褐色の縦班がある。顔は褐色で、バフ白色の目立つ眉斑がある。目は褐色。

 

 

 

 

 

 

食性

サシバの食性

餌動物グラフ主な食物は、田畑や草地、周辺の森林に生息するカエル類、ヘビ類、トカゲ類、モグラ類、昆虫類である。サシバは、見晴らしのよい場所に止まって獲物をさがし、地上や樹上に飛び降りて、それらを捕まえる。2009年に栃木県市貝・茂木地域で行った、巣に運び込まれたエサ動物に関する調査結果を左に示す。
サシバは、里山に生息する様々な小動物を餌にしていることから、里山生態系の指標種と言われている。

餌動物

生息環境

サシバの生息環境

サシバの生息地の多くは、丘陵地に細長い水田(谷津田)が入り込んだ里山環境である。また,樹林の点在する農耕地や草地、低山帯の伐採地を伴う森林地帯にも生息する。

 

 

 

 

 

繁殖

サシバの巣

サシバは、3月下旬から4月上旬に渡来する。渡来するとすぐに求愛・造巣をはじめ、早いものでは4月中旬に、遅くても5月上旬には産卵して抱卵に入る。巣はアカマツやスギなど針葉樹にかけることが多いが、広葉樹にかけることもある。抱卵期間は約1か月で、ヒナ数は2~3羽。ふ化後、36日前後で巣立つ。

 

 

 

巣内雛約10日齢

白い羽毛に覆われた、ふ化後約10日目の雛。

 

 

 

 

 

 

巣内雛約23日齢

ふ化後約23日目の雛。白い羽の間から、幼鳥の茶褐色の羽が生え始めている。

 

 

 

 

 

 

巣内雛約30日齢

ふ化後、約30日目の雛。体も大きくなり、茶褐色の羽も生えそろう。

 

 

 

 

 

 

 

行動圏

繁殖期のサシバの行動圏は、オオタカなどを比べると狭く、巣から500~600m程度の範囲が主な行動範囲である。
2010年に行った栃木県市貝・茂木地域での行動圏調査の結果を右の示す。

 

 

 

 

 

 

栃木県市貝・茂木地域におけるサシバの分布

サシバの高密度生息地

オオタカ保護基金などの調査によって、芳賀台地の東側には、サシバは4km×4kmの範囲で24つがいという高い密度で生息していることがわかった。
この地域には、丘陵地の中にまるで毛細血管のように細長い水田(谷津田)が張り巡らされている。この谷津田は、森林に接する部分が多く、餌となる小動物が多いことから、サシバにとって絶好の生息地になっている。

栃木県市貝・茂木地域における保全上の課題

餌場の減少と生息地の消失

耕作放棄による狩り場の減少と大規模な環境改変に伴う生息地の消失が問題である。特にサシバの好む谷津田は、農作業効率が悪い場所に立地していることが多く、さらに農家の高齢化も手伝い、年々耕作が放棄され藪化している場所が増えている。サシバは、草丈が低い場所を狩り場として好むため、生息には人の手の入った農耕地が必要である。このような場所で、どのように農業を継続していくかが、最も大きな課題である。

 

 

 

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